看護師として働いていると、日々患者さんと触れ合うことになります。
病院は老若男女、様々な症状を持った人がいて、一人ひとり背景は異なります。
たくさんの患者さんと関わる看護師ですが、その中でも今後の看護観に大きな影響を与えた患者さんとの出会いがある人も多いのではないでしょうか。
今回は、看護師が患者さんとのかかわり合いで学んだ大切なことを紹介します。
後悔のない看護を
患者さんを中心に考えた看護をしたい
新人看護師のときに末期ガンや重い病気などの死期が迫った患者さんに緩和ケアを行うホスピスに配属になったOさん。
新人故に日々の業務に精一杯だったOさんを優しく見守り応援してくれる末期ガン患者さんがいました。
ある日の夜、Oさんが夜勤で働いているときに患者さんの容体が急激に悪くなってしまいました。起き上がることも難しく、呼吸状態も苦しそうな中、ナースコールで呼びされたOさんは患者さんのもとに向かいました。
話すのも難しく、差し出された手を握ることで少しでも不安を和らげれれば…と思って数十分ほどそばにいたものの、限られた時間の中で対応しなければならないタスクがたくさんあります。
しかもOさんは新人看護師。なるべく早く仕事に戻らなければ…と思い、
「ごめんなさい、一度仕事に戻る必要があります。必ず後で戻ってきますので、少し離れますね」
と患者さんに伝えたところ、不安なそうな顔をしたものの、手を離してくださいました。
Oさんは急いで仕事に戻り、タスクを終わらせたあとに患者さんの元に向かうと、すでに患者さんは呼吸をしていませんでした。
「自分中心」の看護になっていた
このときのOさんは、新人看護師という立場から、日々の業務や先輩からどう思われるかが思考の中心になってしまっていたことに気づきました。
どうしても自身を取り巻く環境からストレスを感じるとき、忘れがちになってしまいますが、「看護は患者さんのためにあるもの」だと、再認識できたそうです。
隠された患者さんの思いを聞き出すには
「早く逝きたい」その言葉の理由は?
入院している患者さんは、医師や看護師の協力を受けて治療を受け、元気になることを目標にしています。
ただし、治療を受けるということは病気に向き合うということであり、患者さんは不安や、治療の副作用などの痛みに耐えなければなりません。
中には、病気が治るのぞみが薄いのであれば治療を受けず、残された余命を自分らしく過ごしたい患者さんもいます。
看護師のAさんが受け持ったのも、そういう意思を持った患者さんでした。
Aさんは訪問看護師で、脳出血と脳梗塞の既往があり、体の麻痺と視野が狭くなってしまっている患者さんを受け持っており、月2回訪問診療に伺っていました。
診療時には体調や現状の確認の質問をするも、口数少ない返信であまり治療への関心が見られません。
あまり人とお話するのがお好きではないのかも…と思いながらも訪問を続けていたある日、いつも通り「最近調子はどうですか?」と聞いたところ、「治療はもういい。早く逝きたい」と言葉を漏らされました。
薬や治療には毎回指示どおり対応いただいていたためとても驚いてしまい、「治療は順調ですよ。症状が緩和されることで、できることも増えていきますよ。」と伝えても表情は暗いまま。
患者さんにはお子さんがいましたが、遠方に住まれており、家族仲もあまり良くないため基本的にヘルパーさんと看護師であるAさんが訪れる以外は自宅でお一人でいられることが多い様子。
まらた、麻痺もあるため自由に体が動かず、診療時に伺うときもベッドに横たわっていらっしゃることがほとんどです。
視野も狭く、体もうまく動かないとなると、生きていることに希望を失いかけてしまうのかもしれません。
Aさんはこの件から、診療時には治療に関わることだけではなく、家の中に飾ってある写真や気になることを質問していくようにしました。
そうすると、患者さん自身の趣味や昔のことなど、少しずつ話して頂ける機会が増え、初めて会ったときよりも微笑まれることが増えたのです。
これまで無口な方だと思いこんでいただけで、患者さんにも好きなものや趣味、これまでの経験など話題はたくさんあり、診療時には治療に関わることだけではなく患者さん自身の話を聞くことで、生きる気力のちからに慣れるのではないかと実感した経験でした。
まとめ
病院は傷病者が適切な治療や看護を受けられることを目標として運営されています。
ただ、全ての患者さんの症状が治療できるわけではなく、病院で最期を迎える患者さんがいることも悲しい現実ですが事実です。
中には家族がおらず、生涯一人の人は最期に立ち会うのが医療従事者たちが患者さんもいます。
どんなことが起きても後悔ない看護ができるように、知識や技術を身につけるのはもちろん、患者さんとのコミュニケーションを一番大切にしていきたいですね。
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