看護師の大切な仕事の一つとして、看護実践の一連を「看護記録」として記録を残す必要があります。
看護記録は、他看護師と患者さんの情報を共有したり、患者さんに必要な看護ケアを行った記録としてもとても重要な役割を持っています。
毎日書かなければならない看護記録ですが、何度書いても書き方に困ることも…。
今回は、看護記録を書く際に心がける必要のあることや、書くときに困っていることあるあるを紹介します!
看護記録の構成要素
基礎情報
基礎情報には、患者さんの氏名・年齢・血液型などのプロフィールはもちろん、病歴や診断所見、検査データなど対象となる患者さんを理解するために必要な情報が含まれます。
現状および、今後必要となる看護ケアや、起こり得る課題を判断するために必要です。
看護問題リスト
患者さんが抱える問題を抽出し、かつ優先順位に並べたリストを作成します。
このリストは、患者さんがどのような状況に置かれており、どのような看護ケアが必要なのかを把握するため、優先度の高いものから看護ケアを行うために必要な情報となります。
看護問題リストの書式は病院によって異なり、「NANDA-I」や「カルペニート」などあらかじめ分類化されたリストをもとに、患者さんに適した看護診断を選択することが一般的です。
看護計画
抽出した看護問題をもとに、問題解決に向けた個別ケアの計画と観察項目、目標を記載したもののことです。
観察項目や目標、計画内容は、看護問題ごとに記載する必要があります。
計画内容は下記3つに分けて整理しましょう。
- 「観察計画(O-P)」
- 「教育計画(E-P)」
- 「援助計画(T-P)」
看護計画は、看護師が一人で考えるのではなく、患者さん自身がどうしたいのかヒアリングをした上で目標設定、多西するための計画を立てます。
計画が完成したら、患者さんやその家族に見せてあらためて口頭で看護計画を説明し、同意を得たうえで看護計画の書面にサインをして貰う必要があります。
経過記録
経過記録は基本的に、POS(問題志向型システム、Problem Oriented System)の考え方に基づいて記録します。
POSとは、簡単にいうと患者さんがもつ問題を解決するために医療を行うという考え方です。
DAR(フォーカス・チャーティング)
患者さんの状態や反応、患者さんに起こったことに焦点をあてて、
- 患者さんの主観的・客観的情報(Data)
- 行ったケア(Action)
- ケアを行った結果(Response)
を記載する方法です。
ケアと患者さんの反応が明確になるため、ケアの流れがわかりやすいというメリットがあります。
問題は、記録する人によって「どこに焦点を当てるか」が異なるため、記録にムラが出てしまい経過を比較するのが難しい点です。
言い換えれば柔軟性のある記録ができるので、患者さんと看護ケアの一連の流れを記録しやすいとも言えます。
SOAP
患者さんがもつ問題ごとに分けて記録する形式です。
- S(Subject):主観的データ
- 患者さんの発した言葉
- O(Object):客観的データ
- 観察した事
- 実際に行った看護
- A(Assessment)アセスメント
- SとOのデータを元に解釈・分析・判断した事
- P(Plan)計画
- S、O、Aを踏まえた今後の計画
項目が4つに分けられているため、実施した看護家や観察したことを整理して書きやすいというメリットがあります。
その一方で、急変時など突発的な問題が起きたときには記録を取っている余裕は無いので、普遍的に使える書式ではありません。
また、アセスメントを書くのが難しく、看護師の負担が増えるという問題もあります。
経時記録
経時記録とは、対象となる患者さんの現在の状態や、実施した治療・看護ケアを時系列に沿って詳しく記入する方法です。
前述したSOAPやDARとは異なり、問題や出来事などの事柄に焦点を当てて記録する形式ではありません。
経時記録では、「いつ、どこで、誰が、どうなったか/どのようにしたか」を明確に記録することがポイントです。起きた事柄を順に書き、医師や患者さんおよびその家族にどのように対応したかまで詳細に記録します。
経時記録のメリットは、経時的に記録するため誰が見ても分かりやすい点です。一方で、細かな対応までを記録する必要があることから、手間と時間がかかるだけでなく、書き方によっては非常に分かりづらくなってしまうというデメリットにも注意が必要です。
看護サマリー
対象となる患者さんの経過や情報を要約したものです。
他院や在宅ケアへの移行時に、看護ケアの継続性を担保するため、対象患者さんの退院日が決まったタイミングで書き始めるケースが多いです。
看護サマリーには、患者さんの基本的な情報から入院中・治療中の経過、看護問題、日常生活の活動状況などを記載します。
看護記録をするときの心構え
「事実」のみを客観的に記そう!
看護記録は必ず事実のみを記録することが重要です。
自分が実際にみていないことを憶測や思い込みで書かないように心がけましょう。
また、記録に時間がかかるからといって、予定しているケアをあらかじめ記録することはミスのもとになるので辞めたほうがいいです。
実施した看護実践を必ず記録するようにしましょう。
記録が残っていなければ、万が一医療訴訟されたときに適切なケアを行っていないとみなされてしまいます。
5W1Hを意識して書こう
- 「When(いつ)」
- 「Where(どこで)」
- 「Who(だれが)」
- 「What(なにを)」
- 「Why(なぜ)」
- 「How(どのように)」
上記項目を書くことで、担当者や誰に責任があるのかが明確になります。
特に、誰が何を行ったのかは役職名だけではなく、必ず人名を書くようにしましょう。
誰が読んでも分かる内容を心がけよう
時間に追われている業務の中では、看護用語を略語で話すことのほうが多いですよね。
しかし、看護師が作成した看護記録をチェックするのは医療従事者のみとは限らないため、専門用語や略語はなるべく避けて誰でも分かる表現を心がけることが大切です。
病院によっては略語の使用を禁止しているところもあるため、正式名称が何だったか調べるのに時間がかかってしまうこともありそうです。
まとめ
看護記録を書いているうちにやりがちなのが、看護師の主観が入った記録になってしまうことです。
あくまで主語は「患者さん」であり、本人がどういった目標を持っているのか、それに対し看護師からどういった看護計画を提案できるのか、また日々の記録の中でも客観的に見た事実だけを書くことが求められます。
頭ではわかっていても、これまでの経験から似たようなケースがあれば経験則から推測してしまったり、勝手に発言から意図を裏読みしてしまったりしますよね。
そういった事実現象との乖離を防ぐために、5W1Hを含め様々な思考整理方法がありますので、自分にあった方法を探してみましょう。
「看護なび」では看護師専門の求人情報を掲載しており、地域別、雇用形態、職種、勤務時間、給与など、様々な条件で求人検索ができますよ。
理想の勤務先を探したり、将来の勤務先のイメージを具体的にするためにぜひご活用くださいね。